こんなん書きました。

日々の雑感をつらつらと。あるいは手に入れたアイテムのオススメなポイント、運用方法などをご紹介してみたり。

「THE MENTALIST/メンタリスト」にまつわる思い出。

チョコレートを食べてて、そういえば、とかつてFacebookに書き記した一文を思い出し、掘り起こしてみた。
 

「THE MENTALIST/メンタリスト」は海外ドラマ私的ランキングのかなり上位に入る作品のひとつだ。
7つのシーズンに渡って放映されたこのドラマには、素敵なエピソード、シーンがたくさんあって、なかでも私がお気に入りのもののひとつに、こんなやり取りがある。
 
主人公であるパトリック・ジェーンがチョコバーを食べながら、PCのビジュアルチャットを通じ、画面のなかの涙に暮れる少女に話しかける。
「やぁ、聞こえる? イザベル?」
彼女は訳あってこのビジュアルチャットを通して自分の母親が死ぬ瞬間を目の当たりにしたばかりだ。
「あなたは?」
「ジェーンだ。犯人を捜している」
「よかった。犯人を殺して」
「できるならね」
ジェーンが返したおざなりにも聞こえる返事に、話にならないといった表情を浮かべてカメラから視線をそらすイザベル。
そんな彼女にジェーンはこう言葉を続けていく。
「パソコンから離れた方がいい。近所に友達は?」
「母のそばにいたい」
ジェーン側のPCの脇には、命を失ったばかりの彼女の母、アリシアが床に横たわったままなのだ。
イザベルの言葉を噛みしめるジェーン。
彼には、自らの軽率な行動から、自分の妻と娘を連続殺人鬼の手によって失ったという過去がある。
しばらくの間をおき、ジェーンは手にしたチョコバーを口に持っていきながら、こう言うのだ。
「チョコバーはある?」
「何が?」
「チョコだよ。こういうときはオススメだ。もやもやした感情が吹っ飛ぶし、砂糖で元気になれる」
呆れたように、そして悲しみとわずかな怒りを込めて、イザベルが返す。
「母が死んだのよ?」
その言葉を受け止めるジェーンの目に、笑いはない。
「悲しいときに食べるチョコレートは別格だ。
 いつもより味わい深いし、感動する。
 何でもそうだろうね。生きている実感も増す。それを忘れないように。
 大切だ」
「……そうね」
「君に頼みがある。パソコンを消して起きたことを友達に話して」
訝しげな表情を浮かべるイザベル。ジェーンの言葉は、それでも少しずつ彼女の心へと染み込んでいく。
「今すぐに」
パソコンを閉じ、ビデオチャットを終えるイザベラの顔に、もう涙は流れていない……。
 
シーズン2第16話「コード・レッド」の一幕だ。
ここでジェーンが食べているチョコバーは、捜査現場に軋轢を生んで事情聴取から追い出されるときに、雇用主である捜査機関の女性警察官に1ドルをたかって買ったもの。
生真面目すぎる人間をからかい、怒らせ、それでも飄々としたジェーン。そんな姿が続いた後に、前述のシーンは描かれる。
ジェーンが少女に与えた、突拍子もなく思えるアドバイス
しかしそれは、もしかしたら……。
妻と娘を惨殺され、ひとり残されたジェーンにもまた、ふと口にしたチョコバーの甘さに救われたことがあったのかもしれない。
そして、殺人現場にまったく不似合いなチョコバーをジェーンがかじっていたのは、イザベルにすすめたのとまったく同じ理由、つまり、自らが感じている悲しみを紛らわせるためだったのではないか。
 
前述のシーンはそんなに長くない。
しかも、さらりと流れていく、なんでもない一幕なのだ。
だが、見終わった後、しばらく、どころか、今でも私の心に残り続けている。
やるせない喪失感、悲しみにどう向き合うべきか。
いざそのときを迎えたら、自分もチョコバーを食べるのだろうか。
ジェーンのアドバイスに従って、心情を誰かに打ち明けるなんてことができるだろうか。
昨晩ふと目にした一言から、またこのシーンのことを思い出し、いろんな思いが頭を駆け巡っている。
長らく続いた雨のせいか、どうも自分で思っているよりも、心身のバランスがよろしくないみたいだ。
 
パトリック・ジェーンというキャラクターについては、語りたいことがいっぱいある。
気が向いたときに、書き記しておきたいとは思っているのだが。さて。
 
ちなみに「THE MENTALIST/メンタリスト」は、Amazon primeの会員なら「Amazonビデオ」でファイナルシーズンを除いてすべて無料で見ることが可能だ。
吹き替え版ではパトリック・ジェーンの声を郷田ほづみが当てている。
郷田ほづみは「ウソップランド」の頃から大好きな人ではあるが、このドラマだけはどうにもミスマッチな感が拭えない。
「THE MENTALIST/メンタリスト」を見るなら、特に初回はぜひ字幕版で、パトリック・ジェーンを演じるサイモン・ベーカーその人の声とともにドラマを楽しんで欲しい。

  
書いたのは2017年8月21日だそうだ。
きっかけとなった「昨晩ふと目にした一言」は今では思い出せない。
ちなみに今ではファイナルシーズンもprime会員なら無料で見られるようだ。