こんなん書きました。

日々の雑感をつらつらと。あるいは手に入れたアイテムのオススメなポイント、運用方法などをご紹介してみたり。

ゲーム電卓を買ったよ? と、見せかけて、38年という時の流れに老いを感じた話。

f:id:MUN_JP:20180323185020j:plain

これが再販されたゲーム電卓「SL-880」。太陽電池が付き、ボタン電池とのハイブリッドで駆動する今どきの仕様。液晶は10桁。

1980年、今から38年も前に一斉を風靡したカシオのゲーム電卓が、再び発売された。
当時小学校5年生だった私もお小遣いをためて購入し、夢中になって遊んだ一人だ。
発売を知った瞬間に速攻予約。発売日の今日、それを手にすることができた。
 
同じ小学校、中学校へ通っていたヨッチョの家は、豪徳寺商店街の質屋さんで、そこはちょっとしたディスカウントショップも兼ねていた。
私が買ったゲーム電卓は一般的な縦型のものではなく、クレジットカードサイズで横向きのカード型。そのヨッチョのお店のショウウインドウに並んでいたものだ。
小学生にとって電卓なんてそうそう必要のないもので、つまりは当時の私にとっては電卓のオマケにゲームがついているのではなく、その電卓でしか遊べないゲームこそが主役だった。
見た目は通常の電卓となにひとつ変わるところがないのに、なぜかゲームで遊べる。
当時の小学生にとって、いや、世間一般にとっても、そのインパクトは非常に大きかった。

f:id:MUN_JP:20180323185044j:plain

通常の電卓との最大の違いは、ゲームを起動するためだけに存在する[GAME]キーの存在。ちなみにゲームを途中でやめたいときは、[AC]キーを押せば即座に電卓機能に移行する。ま、それがこの機械の本分だからね。

私が買ったカード型のゲーム電卓は、通常の縦型、いわゆる手帳型の電卓に比べると、かなりマイナーな存在だった。しかし、ほぼ触れるだけで反応するカード型電卓のボタンは、実は縦型よりもはるかにゲーム向きだった。
搭載されていた『デジタルインベーダー』というゲームは後述するようにルールにちょっとしたヒネリが効いていて、よく考えられてはいたが、そうは言っても内容的には単純で、ある程度上達してしまってからは、まったく終わらなくなった。
2時間でも、3時間でも遊び続けられる、呑気なゲームだったのである。
当時の液晶ゲーム、いや、上手い人にとってはゲームセンターに置かれたアーケードゲームでさえも、マラソンのようにひたすら長時間遊び、その上でスコアを競うようなものは珍しくなかった。
 
『デジタルインベーダー』で大ヒットとなったカシオのゲーム電卓は、その後、シリーズ化され、ボクシングや野球など、数種類のゲームが登場することになる。
しかし、後発のものはゲームとしては確かにおもしろかったものの、第3段のボクシング以降は、液晶にたとえばボクサーの姿を表示するなど、ゲーム専用のセグメントが用意されることになり、ちょっとやり過ぎの感があった。
数字を表示する一般的な液晶そのままにシューティングゲームを遊ばせる初代、そして2代目までのアイデアは、今考えてもずば抜けて秀逸だったと言える。
それぞれどんなゲームだったかはWikipediaにそれなりに詳しくまとめてあるので、興味があれば、それを参照するといい。
 

ゲーム電卓 - Wikipedia

 
今回発売された「SL-880」には、初代ゲーム電卓に搭載されているものと同じ、『デジタルインベーダー』というゲームが搭載されていて、これはジャンルで言えば、シューティングゲームにあたる。
一番左の桁が照準、左から2桁めが、残気の数。残り6桁がフィールドで、そのフィールドを右から左へと進んでくるランダムの数字が敵、という設定だ。
AIM(照準)ボタンを押すたびに照準の数字は0~9、nへと変わり、もう一度押すと、また0へと戻る。
照準が敵の画面上の敵と同じ数字を表示しているときにFIRE(攻撃)ボタンを押すと、敵は消滅する。
敵を撃ち漏らし、照準のところまで攻め込まれると、ミスとなり、ひとつのステージで3回のミスを重ねると、ゲームオーバーになってしまう。
要するにこれは、タイトルにもある通り、「数字+n」という11種のキャラクターだけで構成された、インベーダーゲームなのだ。

f:id:MUN_JP:20180323185238j:plain

ゲームを起動すると、[.]が[AIM]、[+]が[FIRE]として機能する。ゲーム中に使うのは、この2つのボタンだけ。なんというシンプルさ。

このゲームで面白いのはUFOの存在だ。
照準にあった「n」がまさにその、UFO。
『デジタルインベーダー』のUFOは、ランダムに登場するのではない。
連続して倒した敵の数字を足したときに、その合計が10の倍数、つまり1の位が0になると、撃墜時のスコアが300点にもなるUFOが登場するのだ。
たとえば、2、4、5、9という順で敵を倒したとする。と、合計は20。
これで次に登場するのは数字ではなく「n」となるわけだ。
 
効率よく点を稼ぐには、UFOを出現させ、それを撃破することが必須となるが、そのためには、なるべく照準近くまで敵に攻め込ませ、多くの数字を表示させたうえで、そこからUFOが出る条件に合致する組み合わせを見つけなければならない。
しかし、照準は数字を増やす一方向でしか変えられない。
たとえば8の次に7を撃破しようとすると、もう10回、キーを押さなければならないし、一般的な数字の敵は、右の桁にあるときほど、撃破した際の得点が高い。
何より攻め込ませすぎてはそれだけミスとなる可能性も高まってしまう。

f:id:MUN_JP:20180323185308j:plain

ゲーム中の画面。この場合、現在の照準が「0」なので、もっとも得点が高い今の状態でまず「0」を撃破。その後で、「1、2」と照準を進めて、「2」「8」の順で撃破するのが最適解。これで次に出るのは数字の敵ではなく「n」、つまり300点のUFOとなる。

つまり、『デジタルインベーダー』は電卓のボタンを叩いて遊ぶゲームながら、プレーヤーの頭のなかでは、効率よく点を稼ごうと、常に暗算が繰り返されているのである。
電卓の表示機能を最大限に活かしたそのゲームデザインもさることながら、電卓の存在を否定しかねないルールの皮肉。
これが最高に素晴らしい。

f:id:MUN_JP:20180323190728j:plain

UFO出現! はいいのだが、攻め込まれすぎててミス寸前。この状況からだと「8」をいったん無視して「8、9、n」と照準を進めて、まずUFOを撃破。その後、「0」「2」「8」と攻撃して、次のUFOを出現させるのが理想。あくまでも、理想の話。

当時のゲーム電卓は8桁表示だったが、再販された今回のものは、10桁へと2桁増えているうえ、当然のことながら、当時はなかった太陽電池も搭載されている。
事前に公開されていた製品写真から想像していた通り、ゲームの際は、10桁をフルに使うのではなく、左2桁が空白のままだろうか?ゲーム中は左二桁を非表示にして、8桁だけを使って当時と同じゲームを再現している。
ひさびさに遊んでみた『デジタルインベーダー』は、やっぱりおもしろい。
にしても、だ。
こんなに難しいゲームだったっけ?
指と頭がでんでん働かないよ。
これが38年という時間の流れ、なのかっ。

f:id:MUN_JP:20180323185347j:plain

初回プレイは7面でゲームオーバーになってしまった。スコアは5560点。しかし、その後、このスコアをなかなか超えられずにいる。どういうこと!?